iikkuuyy's Blog

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【感想】勇者「冒険の書が完結しない」



 これまで読んできた中で、一番良かったSS。おそらく、ネット上にある最高傑作SSの一つ。普段、SSを読まない人にも、これだけは読んでもらいたい作品。

 

elephant.2chblog.jp

 

 大まかなストーリーは、魔王を倒した直後の勇者が、気がついたときには最後の冒険の書のセーブ場面まで戻ってしまっているところから始まる。そしてそれから抜け出すために試行錯誤するお話。いわゆるループもの。なので世界観は大体ドラクエ

 

 内容を構造的に見てみると、設定がきっちりと組み立てられていて、何回もループを繰り返しながら、それを脱しようとする勇者一行がきっちりと描かれれている。

 さらには、各シーンの間あいだに適宜挟まれることになる日常的なやりとりが、それぞれのキャラクターの人となりが、適切な形で、徐々に浮き彫りになっていく構成になっている。しかもその各キャラクターとのやりとりは、ストーリー進行上必要最低限しかないにもかかわらず、各キャラクターが最終戦に臨むにあたっては、その勇者チームが、お互いに信頼で結ばれ、魔王を討ち取るのにふさわしいチームであることが、それまでのやりとりの中ですでに明確かされている。

 出てくるキャラクターはオーソドックスに戦士、僧侶、賢者の3人だけれども、それぞれが好感を持てる良いキャラクターとして描かれている。ループものでなくとも、この3人と主人公の冒険録をSSにするだけで、良作~名作のSSが記述できるのではないか、思わずにはいられない。